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川崎つばさ法律事務所
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SUCCESSION相続

後悔しない相続のために

相続とは、亡くなった方の財産を別の誰かに受け継がせる制度です。
遺言があれば遺言に基づいて、遺言がなければ法律の定めに基づいて財産を分けることになります。

財産を残す側の問題

あなたの財産は、あなたが亡くなった後もあなたの希望に沿って使ってもらうことが可能です。そのためには、法律で定められた方法で「遺言」を作成する必要があります。以下のような場合には、遺言の作成を検討した方がいいでしょう。

  • 残された者の争いを未然に防ぎたい
  • 離婚・再婚をした方
  • 内縁の妻がある場合
  • 相続人ではないが特にお世話になった人にあげたい
  • 相続人の中で特にお世話になった方にあげたい
  • 子供がなく、自分の兄弟姉妹にあげるよりも配偶者(夫・妻)にあげたい
  • 事業をしていて特定の者に事業を継がせたいと思っている
  • 財産を相続させる代わりに自分の子供や親の面倒をみることを義務付けたい

財産を残された側の問題

あなたの身近な方が亡くなった場合、あなたはその方の財産を相続する権利がある可能性があります。
遺言がない場合とある場合の2つに大きく分けて考えることができます。

01遺言がない場合

  • あなたが亡くなった方の配偶者(夫又は妻)または子であれば、相続する権利があります。
  • あなたが亡くなった方の親であれば、亡くなった方に子がいない場合、
    相続する権利があります(亡くなった方に配偶者(妻または夫)がいても変わりません)。
  • あなたが亡くなった方の兄弟姉妹であれば、亡くなった方に子及び親がいない場合、
    相続する権利があります(亡くなった方に配偶者(妻または夫)がいても変わりません)。

※具体的な法定相続分については、お問い合わせいただければご回答致します。

02遺言がある場合

原則として、遺言どおりに財産を分けることになります。ただし、あなたが、亡くなった方の配偶者(夫又は妻)、子、直系尊属(例:被相続人の父または母)であれば、遺言によりもらえる財産が少なくされた場合でも、遺留分という権利を主張できる場合があります。なお、あなたが亡くなった方の兄弟姉妹の場合、遺留分はありません。

時間の問題

相続には時間が経つことによってできなくなる手続があります。 その中でも以下の二つは重要でかつ期間が短いので、早急に検討しましょう。

013カ月

亡くなった方に財産より債務が多い場合、相続放棄を検討することになります。相続放棄をすれば亡くなった方の財産を相続できませんが、同時に債務も相続しません(財産を相続すると債務も相続します)。相続放棄の期限は3ヶ月になりますので、すぐに検討しましょう。なお、財産の限度で債務も相続するという限定承認という方法もあります。

021年

遺言によって財産をもらえなくなるまたは少なくされた場合、遺留分という権利を主張できる場合があります。この期限は1年になります。

よくある質問

“相続を放棄した”といったことを周囲からの話でよく聞くのですが、相続放棄とはどのようなことをいうのですか。
相続放棄とは、相続開始によって一応生じた相続の効果を全面的・確定的に消滅させる行為のことを言います。相続を放棄した場合その相続に関しては「初めから相続人とならなかったものとみなす」とされています(民法939条)ので、相続が開始された(すなわち、被相続人が死亡した)時から相続人になる予定であった者は相続人ではないことになります。
相続放棄をした後に、被相続人の借金が新たに見つかりました。このような場合にはこの債務を私は負ってしまうのでしょうか。
相続放棄をすると「初めから相続人とならなかったものとみなす」(民法939条)とされています。このため、新たに相続債務が見つかったとしても相続放棄をした者は相続人となってはいないのですから、これについての負担を負うことはありません。
相続放棄をしようとしています。相続放棄をする場合にはどのようなことをしなければならないのでしょうか。
相続を放棄する場合には、その旨を家庭裁判所に申述しなければなりません。なお、相続を放棄する場合は、相続の開始があったことを知ったときから(つまり、被相続人の死亡を知った時から)三か月以内という期間制限が設けられている(民法915条1項)ため注意が必要です。
相続放棄(または単純承認・限定承認)をした後、それを撤回することはできるのでしょうか。
一度相続放棄もしくは承認をしてしまったら、それを撤回することはできません(民法919条)。これは、相続放棄や承認の期間(同法915条)の3か月の間でも結論にかわりありません。
一つ前の質問に続けて質問なんですが、相続の放棄や承認をした場合にはもうそのことは覆ることはないのでしょうか。
民法919条1項では、「撤回することはできない」とされています。このため、承認や放棄の取消しや無効を主張することはできると考えられます。 取消しの事情としては行為能力の制限(民法5条、9条、13条等)や詐欺強迫による相続放棄や承諾等の取り消し原因があれば取り消すことができます。また、無効の事由としては熟慮期間内に申述がされていないことや申述が真意でないこと等が挙げられます。
相続放棄と遺留分の放棄、相続分の放棄はどう違うのですか。
相続放棄とは、自己に対する関係で不確定にしか帰属しなかった相続の効果を確定的に消滅させる相続人の意思表示のことを言います(民法939条)。このため、相続放棄をすると積極財産(ex.預金、土地など)や消極財産(ex.借金)のすべての相続財産は相続人に帰属することはないことになります。他方で、「相続分の放棄」とは相続開始後(つまり、被相続人の死亡後)に相続によって得る積極財産についての具体的相続分を放棄することです。このため、消極財産についての負担は相続分の放棄をした場合にも残ることになります。ここが、相続放棄と相続分の放棄の大きな違いです。なお、遺留分の放棄は遺留分を持つ法定相続人が遺留分減殺請求を放棄することですので、前二者とは段階が異なることになります。
相続を放棄した場合には、放棄をした者の子が代襲して相続人となるのでしょうか?
代襲相続の原因は相続開始(つまり被相続人の死亡時)前に被相続人の子が死亡した場合または相続人の欠格事由に該当する場合(民法891条)、もしくは推定相続人の廃除(民法892条)がなされている場合に限っているため、相続の放棄は代襲相続の原因に該当しません。よって、相続放棄をした者の子が代襲相続することはありません。
相続欠格とは何ですか?
被相続人との身分関係によれば、相続権を持つものであっても、一定の事由に該当すると当然に相続権が失われることとなります。このような制度を相続欠格といいます。欠格事由に該当する者としては、民法891条各号に規定する以下の事由があります。
  • 故意に被相続人または先順位もしくは同順位の相続人を死亡するに至らせ、または至らせようとしたため刑に処せられた者
  • 被相続人の殺害されたことを知って、告発・告訴しなかった者
  • 詐欺・脅迫によって、相続に関する被相続人の遺言の作成・撤回・取消し・変更を妨げた者
  • 詐欺・脅迫によって、被相続人に、相続に関する遺言の作成・撤回・取り消し・変更をさせた者
  • 相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者
です。相続欠格制度は、相続による財産取得の秩序を乱して違法に利得しようとする行為をしたものに対する民事上の制裁と考えられています。
被相続人が書いた遺言書を誤って破棄してしまいました。民法ではこのような人は相続人になることはできないと書かれていますが(欠格事由に該当すると規定されていますが)、私はもう相続人として相続を受けることはできないのでしょうか?
相続人となれる可能性は十分にあるように思います。 確かに、民法891条5号では遺言所を破棄した場合には相続人となることはできないと定められています。しかし、この条文は遺言に関して不当な干渉行為があった場合には相続人となる資格を失わせることにより民事上の制裁を課すことが目的として定められています。このため、遺言書を破棄した場合であってもそれが相続に関して不当な利益を目的とする場合でない限り、この規定に当たらないこととなります。 このため、本件では誤って遺言書を破棄してしまったのでありますから、遺言に関して不当な利益を目的としているわけではなので、相続人となることができると考えられます。
一つ前の質問に関連するのですが、欠格事由に該当する者に対して被相続人である私はそのことを許し欠格事由該当者を相続人とすることはできるのでしょうか?
相続欠格は公益的な性質を有する制度と考えられています。このことより、被相続人の意思によって欠格の効果(つまり、相続人とならないということ)を消滅させる規定はないです。 しかし、被相続人の財産処分の自由を強調すべきとして被相続人の意思や感情の表示(宥恕)によって欠格者の相続資格が回復するとの見解が有力とされています。加えて、推定相続人を殺害したことによって欠格者となった者についても、被相続人が欠格者を宥恕して、その者の相続資格を肯定した審判例もあります。 このため、欠格事由に該当するものがいる場合であっても、被相続人によってその者を相続人とすることは可能と考えられます。
認知症の父親が遺言書を作成することはできるのでしょうか?
有効に遺言を作成するには、遺言作成者に遺言能力が必要となります。遺言能力とは単独で有効に遺言できる資格のことをいいます。つまり、遺言をするには誰に何を相続させるのかを理解して判断する能力が必要です。 ただ、遺言能力があるか否かの判断は個別具体的に判断されます。このため、遺言者が認知症であったとしても遺言能力が絶対にないとは言い切れません。このような場合には、遺言者の認知症の程度、遺言作成時の状況、遺言内容の複雑さの程度等諸般の事情を総合的に考慮して遺言能力の有無を判断することとなります。このため、遺言者の方が遺言を作成する場合には、遺言作成の様子をビデオで撮る、遺言の内容は極力簡単なものにする等の工夫をすることが良いと考えられます。
遺言書を書くときは「遺贈する」という書き方と「相続させる」という書き方があると聞いたのですが、どのような違いがあるのですか?
主な違いとしては、法定相続人以外の者に対して財産を譲ろうと考えている場合には「遺贈する」という文言を用い、「相続させる」という文言は法定相続人に財産を譲ろうとする場合に用います。 ただ、「相続させる」旨の遺言は遺産分割方法の指定と考えられますが、相続分の指定を伴う可能性もあるので注意が必要です。たとえば、ある土地“だけ”を与えるという趣旨で記載される場合も考えられますし、他方である土地を“余分に”与える趣旨とも解釈する場合もあるということです。
父が遺言を残して亡くなったのですが、相続人だけで遺言と違う遺産分割をすることはできるのですか?
遺言者は自己の財産を遺言でどのように処分するかを決めることができます(民法964条)。このため、遺言がある場合には、遺言者の財産を引き継ぐ者はそれに拘束されるのが原則です。しかし、遺言者の意思と共同相続人の意思が食い違う場合があることは大いに考えられますし、遺言を優先させてもその後共同相続人間で贈与契約や交換契約をしてしまえば結果として同じ財産状況になります。このため、共同相続人及び受贈者の全員が遺言と異なる遺産分割協議を成立させた場合にはこの遺産分割協議が優先されると考えてよいと思います。
遺言執行者が父の相続財産の内容を示してくれないのですがこのような場合はどうすればよいのでしょうか?
遺言執行者は遅滞なく、相続財産の目録を作成して相続人に交付しなければならないという義務や相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする義務があります(民法1011条1項、1012条1項)。そして、遺言執行者は自身の任務を怠ったときにはその利害関係人(相続人等)は遺言執行者の解任を家庭裁判所にその解任を請求することができるとされています(同法1019条1項)。 このため、本件では遺言執行者は相続財産目録を作成して相続財産の内容を示さなければならない義務があるにも関わらずそれを怠っています。このような遺言執行者は明らかに任務を怠っているといえるので、このような遺言執行者を解任することができます。
相続はどのような過程でなされるのでしょうか?
相続の態様には大きく分けて二つあります。一つは親族制度に基づいた法定相続制度で、もう一つは、死者の生前の意思にも続いた遺言制度です。遺言制度による相続は遺言者が単独ですることができ、またその効力は遺言者の死亡時に生じるので、相続の過程を考える必要はあまりないと考えます。他方で、法定相続制度は相続人が一人しかいない場合(単独相続)と数人いる場合(共同相続)とで処理の仕方が異なることから、相続の過程を知っていることが良いと思われます。まず、共同相続ですがⅰ被相続人の死亡→ⅱ遺産共有→ⅲ各相続人による相続の承認や放棄→ⅳ遺産分割→ⅴ相続財産に対する各相続人の具体的取得分の確定という流れになります。次に、単独相続ですが、共同相続の過程のうちⅱ、ⅳはない点が異なることになります。
相続の対象となる財産にはどのようなものがあるのでしょうか?
相続の対象となるのは「被相続人の財産に属した一切の権利義務」です(包括承継 民法896条本文)。他方、例外として「一身に専属した」権利義務は相続の対象とはなりません(同条但し書き)。たとえば年金の受給権等が挙げられます。
代襲相続人がまだお腹の中にいる場合(胎児である場合)、胎児は相続することはできないのでしょうか?
民法886条では胎児は「相続について」生まれたものとみなされます。このため、代襲相続も相続の一つなので、代襲相続についても胎児は生まれたものとして扱われます。よって、代襲相続でも胎児は相続人の範囲に含まれることになるため、胎児であっても相続をすることができます。
代襲相続とはどのような相続のことをいうのですか?
相続人となるべき子または兄弟姉妹が一定の事由により相続権を失った場合に、その者の子が、その者の受けるはずだった相続分を、被相続人から直接に相続できることを言います。 代襲相続人の上の世代から下の世代へという自然な財産承継に対する期待を相続人の死亡・欠格事由該当・廃除という代襲相続人の責めに帰する事情ではないことにより害するのは公平に反するという趣旨により認められている制度です。
相続人はどのような人がなるのですか?
相続人となりうる人は、大きく分けてⅰ被相続人の配偶者と、ⅱ被相続人と法律上血のつながりがある者(血族)です。 ただ、ⅱについては注意が必要です。血族といっても①子②直系尊属③兄弟姉妹がいます。そして、血族の相続人は①②③の順に相続人の順位が決められており、順位の早いものだけが相続人となります。
相続はどのようなことにより生じるのでしょうか。
原則として相続は被相続人の死亡によって開始します(民法882条)。ただ、死亡の事実が証明できない場合には失踪宣告(同法30条)や死亡認定の制度により被相続人の死亡があったとみなされ、また事実上推定されることになります。
遺言とはなんですか?
自らの財産は原則としてどのように処分するかは自由です。これは自分の死後も同じで遺言を使ってその処分方法を決めておくことができます。
どのような場合に遺言をするとよいのですか?
(1)残された者の争いを未然に防ぎたい場合 例えば,以下のような場合です。 ① すでに配偶者が亡くなっていて自分が亡くなれば子供だけが相続人になる場合 配偶者が存命中であれば,配偶者の意向を子どもたちが尊重して話がまとまることが多いですが,親がいないと子ども同士で争いになることがあります。 ② 日頃から相続人の間の仲が悪い,つきあいがないといった場合 話し合いでもめる可能性が高いといえます。 (2)離婚・再婚をした方 再婚する前の配偶者と,再婚後の配偶者の双方に子供がいる場合には,双方の子供が相続人となります。このような場合,感情的な問題が生じやすく,財産の分け方がなかなか決まらないことが考えられます。 (3)内縁の妻がいる方 内縁の妻は相続人ではありません。特別縁故者として財産を受け取れる場合もありますが,原則として内縁の方に財産を残すためには遺言が必要となります。 (4)相続人ではないが特にお世話になった方に財産を残したい場合 日頃面倒を見てくれた方(たとえば,子ども配偶者など)に相続権はないけどもお礼に財産をあげたいというときは遺言であなたの意思に沿って財産を使ってもらえます。 (5)相続人の中で特にお世話になった方に多く財産を残したい場合 相続人に対しても相続させる財産の割合を指定することができます。 (6)子供がなく自分の兄弟姉妹にあげるよりも自分の配偶者にあげたい場合 ご夫婦にお子様がいらっしゃらず,かつご両親もお亡くなりになっていると配偶者の方とともにご自身の兄弟姉妹も相続人となります。兄弟姉妹よりも配偶者に財産を残したいとお考えでしたら,遺言で配偶者の方にすべての財産を残すことができます。なお,兄弟姉妹には遺留分がありませんので,兄弟姉妹の相続分をすべて配偶者のものとしても遺言者の生前の意思は実現できることになります。 (7)事業をしていて特定の者に事業を継がせたい場合 法律で定められた割合で分割する場合,事業用財産や株式を分割することとなり事業を続けていくことが困難となることがあります。遺言によって,事業に必要な財産や株式を事業を継ぐ方に相続することが可能です。 (8)財産を相続させる代わりに自分の子供や親の面倒をみることを義務付けたい場合 面倒をみるという約束で相続財産を受け取った方が義務を果たさないときには,その義務を果たすように要求することが出来ます(ただし,受け取った相続財産の価格を超えない範囲内に限られます)。
遺言を残さない場合の相続人は誰になりますか?
(1)  配偶者がいる場合 → 配偶者は常に相続人となります。 (2)  配偶者以外の以下の者がいる場合 ①    子 ②    直系尊属(両親,両親がいない場合祖父母) ③    兄弟姉妹 *配偶者は常に相続人となります。①~③は,①の者が一人もいなければ②の者が相続人となり,①と②の者が一人もいなければ③の者が相続人になるという関係です。
遺言の作成方法を教えて下さい。
自筆証書遺言,秘密証書遺言,公正証書遺言の三つがありますが,自筆証書遺言,秘密証書遺言は遺言を残される方自らが作成します。自ら作成するものですので,法律に定められた形式を満たしていないと無効となるおそれがあります。公正証書遺言は公証役場で遺言をする方が公証人に口述して公証人が遺言書を作成するもので最も安心な形式です。また,公正証書遺言の場合,公証役場が遺言を保管してくれるので,遺言の紛失を防ぐことができるというメリットもあります。
遺言執行者とはなんですか?
遺言執行者とは遺言の内容を実現する者のことで,遺言の記載に従って,不動産の名義を変更したり,預金の名義を変更したりすることができます。遺言執行者は,遺言で指定することができます。あなたの死後,あなたが遺言に記載したとおりに財産を分けてもらうためには,遺言執行者を選任するとよいでしょう。
遺留分とはなんですか?
相続人に保障された最低限の権利です。たとえば,遺言によって相続人の一人や相続人ではない他人に全財産を相続させることも可能です。そのような場合であっても,兄弟姉妹以外の相続人には最低限の権利として遺留分が認められています。 例えば,妻を残して亡くなった方が,相続人ではない第三者にすべての財産を相続させるという遺言をしていた場合(亡くなった方には両親も祖父母もいないとします),妻には相続財産のうち2分の1について,財産を受け取った第三者に請求することができます。
親族が財産を残して亡くなりました。まずは何から始めればいいのでしょうか?
遺言がある場合,遺言書に従って財産を分けることになります。しかし,遺言がない場合には,法律に定められた相続人が財産を相続する権利があります。遺産を分ける手続きは以下のような流れになります。 (1)相続人を調べる 相続する権利を有する者が誰であるのかを調べなければなりません。たとえば,亡くなった方の名義の預金の名義を変更するためには,金融機関に対し戸籍謄本等によってすべての相続人を明らかにし,その相続人全員の実印が押印した書類と印鑑登録証明書が必要となることが一般的です(必要書類は金融機関によって異なります)。 (2)財産を調べる 残された財産をどのように分けるかを相談するためには,そもそもどのような財産があるのかを調べる必要があります。不動産について登記簿を取得したり,金融機関に対しては残高証明書等の発行を依頼します。 (3)相続するかしないかを決める 残された財産が明らかになったら,相続する権利を有する人は,そもそも相続するのかしないのかを決めます。相続はプラスの財産のほか,借金などマイナスの財産についても引き継ぐことになりますので,財産を調査した結果,借金の方が多いのであれば,相続をしないという選択肢も検討することになります。 (4)分け方を決める 相続することを決めた相続人で具体的な財産の分け方を話し合います。話し合いがまとまれば,財産をどのように分けるのかを記した遺産分割協議書を作成します。 (5)財産の名義を変更する 遺産分割協議書を作成した後,協議書にしたがって,財産の名義を変更します。たとえば,不動産の登記名義を相続人の一人に変更する,預金の名義を変更するなどを行います。
「遺産分割協議書」には決められた作成方法はありますか?
遺産分割協議書には法律で定められた作成方法はありません。しかし,戸籍から明らかになった相続人全員が実印を押印する,不動産の記載については登記簿の記載どおりに行うなどをしないといけません。
遺産分割についての話し合いがまとまりません。どうすればよいですか?
家庭裁判所の調停,審判を利用することができます。調停の手続きでは,当事者双方から裁判所が事情を聞いたり,場合によっては残された財産の価値を鑑定する,必要な資料の提出を求めるなどして,当事者双方が納得できる解決案を話し合うことになります。 調停においても話し合いがまとまらない場合,自動的に審判手続が開始され,裁判官が,遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して審判します。 審判に不服がある場合には,即時抗告をすることができます。即時抗告期間は,審判の告知を受けた日の翌日から起算して2週間となっています。また,即時抗告の申立は審判をした家庭裁判所に対して行います。抗告審は高等裁判所で行われます。
父が亡くなり,私は相続する権利がありますが,父には借金もあるようです。このような場合,どうすればよいですか?
相続をすると預金などのプラスの財産だけでなく,借金などのマイナスの財産も受け継ぐことになります。相続には,以下の3つの種類があり,相続放棄や限定承認を検討するとよいでしょう。ただし,限定承認は手続も複雑かつ煩雑であり,あまり利用されてはいないようです。 ・単純相続・・・亡くなった方のプラスの財産もマイナスの財産も全て受け継ぐもの ・相続放棄・・・亡くなった方のプラスの財産もマイナスの財産も一切受け継がないもの ・限定承認・・・亡くなった方のマイナスの財産を相続人が受け継いだプラスの財産の限度で受け継ぐもの
相続放棄などはいつまでにしないといけないのですか?
自分のために相続の開始があったことを知った時から三か月以内にしなければならないと法律で定められています。放棄について熟慮する必要があるときには,放棄期間を延長するよう家庭裁判所に申し立てることも可能です。
相続放棄は具体的にどのような手続をすればよいのですか?
家庭裁判所に対して,必要な書類を添付の上「相続放棄の申述書」を提出します。
相続はどのようなことにより生じるのでしょうか。
原則として相続は被相続人の死亡によって開始します(民法882条)。ただ、死亡の事実が証明できない場合には失踪宣告(同法30条)や死亡認定の制度により被相続人の死亡があったとみなされ、また事実上推定されることになります。