しかし、弁護士費用が払えない場合でも、支払い方法の変更や、国選弁護士・法律援助・立替制度の利用など、さまざまな対処法があります。
「費用が用意できないから」と諦める前に、弁護士費用が払えない場合にどのような対処法があるかを把握しておきましょう。
この記事では、弁護士費用が払えない場合の対処法について詳しく紹介します。
弁護士費用が払えないとどうなる?
弁護士費用には、大きく分けるとトラブル解決前に支払う着手金と、解決後に支払う成功報酬があります。ここでは、これらの費用が払えない場合について解説します。
着手金が払えない場合
着手金が払えない場合、弁護士によるトラブル処理は開始されません。
その理由は、弁護士は着手金が支払われたことを確認したのち、トラブル解決に向けた処理を進めていくためです。
着手金が払えないと、いつまでもトラブル解決に向けた話は前に進みません。
そのため、弁護士にトラブル解決を依頼する場合は、「着手金がどれくらいかかるか」「いつまでに用意しなければならないか」などを確認しておきましょう。
期日までに支払わなかった場合は、再度相談を受け付けてくれなくなる可能性もあるため注意が必要です。
なお、着手金は結果が成功・不成功に関係なく支払う弁護士費用の一部になります。
依頼したトラブルが望む通りに解決しなくても戻ってこないお金であり、途中で弁護士を解任しても原則として返金は行われません。
成功報酬が払えない場合
成功報酬が払えない場合は、まず催促の通知が届き、通知を無視すると法的措置として財産の差し押さえになる可能性があります。
財産の差し押さえが発生すると自身の信用情報に傷がついてしまい、新たにクレジットカードやローンを組めなくなる可能性があります。
そうならないためにも、成功報酬は必ず期間内に支払うようにしましょう。
成功報酬は弁護士に依頼したことによって得た経済的利益に対し、一定の割合を支払うルールになっています。
例えば、経済的利益の20%が成功報酬の場合、100万円の慰謝料を得たとすると20万円を成功報酬として支払わなければなりません。
成功報酬は、トラブル解決で手にした利益以上の費用が請求されることはありません。
弁護士に依頼する際は、成功報酬がどれくらいに設定されているか事前に聞いてから依頼することが大切です。
弁護士費用が払えないときの対処法
弁護士費用が払えない方でも、弁護士に依頼してトラブル解決ができるようにさまざまな制度やサポートが用意されています。
ここでは、弁護士費用が払えないときの対処法を解説します。
分割払いに対応している弁護士事務所に依頼する
弁護士費用は基本的に一括払いですが、弁護士事務所によっては分割払いに対応しています。
分割回数は弁護士事務所によって異なるのが一般的ですが、最大12回を限度にしているところが多く、基本的には1年以内の完済が求められます。
しかし、1年以内というのはあくまでも目安であり、借金問題の解決のように依頼主に返済能力がないと判断される場合には、分割回数を増やしてもらえることもあります。
なお、弁護士費用における実費に関しては手続きを進める過程で発生するため、基本的に分割払いができません。
国選弁護人制度を利用する
刑事事件の被疑者、もしくは被告人が無料で利用できる制度に国選弁護人制度があります。
国選弁護人制度とは、自分自身で弁護人を選任できない人に対して、国費で弁護人を選任する制度です。
刑事事件では弁護人を付けられる権利はすべての人にあるため、費用がなくても弁護人に依頼できるようになっています。
国選弁護人に依頼できる人は、経済的な事情により私選弁護人を選任できない人です。
そのため、刑事事件においても私選弁護人を選任することが原則であり、国選弁護人は救済措置制度となります。
国選弁護人を選任できる資力の基準は、50万円以上のいつでも自由に使えるお金(流動資産)があるかどうかです。
車や家などの資産があっても、流動資産が50万円以上なければ国選弁護人制度を利用できますが、離婚や相続問題などの民事事件では利用できません。
日本弁護士連合会の法律援助を利用する
弁護士費用を支払えない場合、日弁連(日本弁護士連合会)の法律援助を利用するのも方法の一つです。
この援助は日弁連が弁護士から集めた会費や、日弁連が受けた贖罪寄付によって行われます。
法律援助の種類
日弁連が行っている法律援助の種類は以下の通りです。
- 刑事被疑者弁護援助
- 少年保護事件付添援助
- 犯罪被害者法律援助
- 難民認定による法律援助
- 外国人に対する法律援助
- 精神障害者・心神喪失者等医療観察法法律援助
- 子どもに対する法律援助
- 高齢者、障害者およびホームレスに対する法律援助
支援内容は案件によって異なります。
例えば、刑事事件の被疑者であれば警察官や検察官との交渉、示談、アドバイスなどが挙げられます。
法律援助の条件
日弁連が行っている法律援助を利用する条件は、法律援助の対象事案で申込者が以下の収入条件を満たし、弁護士に依頼する必要がある場合です。
- 単身者:201,000円以下
- 2人家族:276,000円以下
- 3人家族:299,000円以下
- 4人家族:329,000円以下
収入は、申込者および配偶者の合計した手取り月収です。家族が1名増えるごとに、基準額に33,000円が加算されます。
また、申込者または配偶者が当該事件にかかる保険金や生活のために必要な住宅・農地以外の不動産、その他300万円以上の資産を有していないことも条件です。
日弁連の法律援助は法テラスが窓口となっているため、利用したい場合は法テラスに被害の状況や法的支援を希望する旨を伝えます。
弁護士費用立替制度を利用する
弁護士費用が払えない場合は、弁護士費用立替制度を利用するのもおすすめです。ここでは、弁護士費用立替制度とその条件を解説します。
弁護士費用立替制度とは
弁護士費用立替制度とは、弁護士に依頼する際にかかる費用を法テラスに立て替えてもらい、その後に返済していく制度です。
民事法律扶助業務の一つであり、法テラスが依頼者の代わりに弁護士費用を支払い、依頼者は分割払いで法テラスに返済を行います。立替制度の対象となるのは着手金や実費です。
また、この制度を利用すると弁護士に無料で法律相談することもできます。
返済は無利息で、月々の返済額も5,000〜10,000円程度となるため、無理のない範囲で支払える点が大きなメリットです。
事情によっては返済金額が減額されたり、返済が猶予となったりする場合もあります。
弁護士費用立替制度の条件
弁護士費用の立替制度は、経済的に困窮している方を対象としており、以下の3つを満たすことが利用の条件となっています。
- 収入や資産が一定基準以下
- 勝訴の見込みがないとはいえない
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
収入や資産の基準は、お住まいの地域や住宅ローン、家賃負担の有無によって変わります。
勝訴の見込みとは、自己破産なら免責決定、未払いの給料請求であれば給料を支払ってもらえる見込みがあるなど、問題解決の見込みがあるかどうかです。
なお、弁護士費用の立替制度を利用する条件は、弁護士に相談し、審査に必要な書類を準備して審査が完了となります。
援助が開始されると、依頼した弁護士が問題解決のために動くため、依頼主は方針確認や打ち合わせ、書類の準備などを進める必要があります。
弁護士費用を抑える方法はある?
弁護士費用を少しでも抑える方法としては、無料相談や早期の対応、弁護士保険への加入などが挙げられます。ここでは、弁護士費用を抑える方法を紹介します。
無料相談を活用する
無料相談を上手に活用することで、弁護士費用を抑えることが可能です。
基本的に無料相談で費用がかからないのは法律相談料のみであり、手続きや調査が必要となる場合は、本契約を結んで着手金を支払います。
そのため、無料相談を行ったからといって弁護士費用が安くなるわけではありません。
しかし、無料相談を上手に活用することで、その後の手続き方針や必要な費用などを把握できるため、無駄な出費を抑えることはできます。
無料相談を利用する場合、事前に決められている時間を超過すると別途料金が発生する点に注意が必要です。
無料相談の時間内で相談を終わらせるためにも、事前に相談内容をまとめておいて、スムーズに伝えられるようにしましょう。
問題が大きくなる前に相談する
弁護士費用を抑えるためには、問題が大きくなる前に相談して早期解決を目指すことが重要です。
早い段階で弁護士に入ってもらうことで、複雑な手続きや長期にわたる交渉を防げる場合があります。
弁護士費用は、内容が複雑で解決までの期間が長いほど費用も高くなるのが一般的です。
例えば、慰謝料の請求が必要となる事案において、早期であれば内容証明のみの数万円だけで済むことも、対応が遅れると訴訟に発展して数十万円の費用が発生する場合もあります。
「今の段階なら弁護士に相談する必要はない」と判断してしまうと、取り返しのつかない状況になる場合もあるため、問題が大きくなる前に相談することが大切です。
事案発生前なら弁護士保険に加入しておく
弁護士費用は、事案発生前なら弁護士保険に加入して備えておくこともできます。
弁護士保険とは、法的トラブルにおいて弁護士を利用した時にかかる弁護士費用を補償してもらえる保険です。
範囲は保険内容によって異なるものの、全額補償してもらえるプランもあります。しかし、弁護士保険の多くは加入日以前に原因のあるトラブルは補償の対象になりません。
すでにトラブルが発生していて弁護士に依頼しようと検討している段階だと、弁護士保険に加入しても補償を受けられないため注意しましょう。
また、弁護士保険は保険金の支払い回数と限度額があり、支払金額についても1事案あたりの限度額や年間限度額があります。
保険金の支払い回数や金額が限度に達した場合は、次の更新が行われず、保険契約が終了する場合もあります。
弁護士保険への加入を検討している場合は、要件や保険料を確認しておきましょう。
まとめ
この記事では、弁護士費用が払えない場合の依頼や対処法を解説しました。
弁護士費用が払えない場合は、弁護士事務所によっては分割払いもできるため、事前に相談してみましょう。
他にも、日弁連の法律援助や法テラスの弁護士費用立替制度、刑事事件なら国選弁護人に依頼するというのも方法の一つです。
また、弁護士費用を抑えるためには早めに無料相談を活用して相談し、問題解決に早期に取り組むこともポイントになります。
将来発生するかもしれないトラブルに備えておきたい場合は、弁護士保険に加入しておくのもよいでしょう。
法律相談なら、川崎つばさ法律事務所にご相談ください。
当事務所では、債務整理や離婚問題、相続、高齢者問題、インターネットトラブル、刑事事件など、幅広いジャンルの相談を取り扱っています。
法律相談は予約があれば土曜・日曜・祝日も対応しており、見通しや処理方針、弁護士費用についてもわかりやすく丁寧にお伝えします。
費用に不安のある方は、分割払いや法テラスの利用にも対応しています。
「弁護士費用が払えるかどうか不安」という理由で弁護士への相談を躊躇っている方も、まずはお気軽にご相談ください。